散文詩的な何か
低い空から落ちてきた水滴はやがて滑り台のようになって
僕らはそれを滑り降りていく
規則的なテープの音に沿って流れてくるタイプライターの音は
低温のお湯に似た穏やかさを運んでくる
似た者同士の二人が過ごす空間は甘美的で
どこかシェルターのような安堵感
世界に他者の存在を認識できないような
暖かくも囲われた小さい自由空間
誰しもが持っている自分たちだけの場所で
放牧されているかのようにふるまえる
自由にしてみるなんて言うだけは簡単だから
とりあえず口に出してみる
欲求に素直にできるのならなんと素晴らしいことか
したいことだけできるなんてなんて素晴らしいことか
自由というものに施錠されて閉じ込められて
結局不自由であるということに気づく
目の前のことだけが本当なら本当のことなんて
なんて薄っぺらいのだろう
何もかもうまくいくようにできているなら
解き放つことができるだろう
空から落ちる水滴のように身を任せて
気が向いたら虹を作ろう
晴れた日があるなら綺麗な花を摘んで
窓際の空き瓶に揺れるカーテンを